個の時代が進む21世紀-高林秀亘

5MTマニュアルトランスミッションはCVT,DCT,ATより伝達効率が高い

5MT-シフトノブ

日本車のほとんどは、CVTまたはAT/オートマチックトランスミッションと呼ばれる変速機を搭載しています。

そして、一部の車種やスポーツ性が与えられている自動車、トラック、バスにMT/マニュアルトランスミッションが残されています。今となっては、日本車の中で5MT、6MT搭載車はごく一部。

他方、欧州車の中には、ATとMT以外にDCT(DSG)と呼ばれるツインクラッチを搭載するモデルがあります。

ここで、歴史が長いMT、そして、AT、CVT、DCT(DSG)の各トランスミッションの特徴を比較してみたいと思います。ちなみに、トランスミッションの伝達効率は大雑把に「MT > DCT > AT > CVT」。

5MTの数多いメリット

MTは枯れた技術として、忘れられつつあるかもしれません。AT限定免許制度の浸透により、若年層にとってマニュアル車はマニアックで操作が面倒といったイメージがあるかもしれません。

しかし、MTはピストンエンジンを搭載した乗用車、トラック、バスにとって、優れたトランスミッション。何故なら、

・構造がシンプル

・本体重量が軽い

・信頼性が高い

・伝達効率が95%以上

・燃費がいい

・メンテナンスが簡単

このように、マニュアル車はメリットづくしです。

5MT, マニュアルトランスミッション

重量が軽い5MT

MTは長い歴史を持つトランスミッションで構造がシンプルかつ軽いのが特徴。どの自動車メーカーにとっても、軽量化は重要なテーマ。

各自動車メーカーのオフィシャルサイトを閲覧すると、少数派ながら、今でもMT車が見つかります。

オフィシャルサイトのスペック一覧表で、同一グレードのMTとCVT搭載車の車重を比べると、MT車の方が確実に20kg前後は軽いようです。CVTやATから5MTに換装するだけで、確実に20kg前後は軽量化できるのです。

特に軽自動車やコンパクトカーにとって、20kgの軽量化は大きいのではないでしょうか。MT車はCVTやAT車より、新車から廃車まで18L灯油入りポリタンクが約1個分軽い状態がずっと続くのです。

高い伝達効率&速度管理が容易な5MT

MTは構造がシンプルである以上、トラブルは皆無に近く、信頼性と耐久性は抜群。欧州と開発途上国ではMT車が主流です。

MT車に乗り込み、左足でクラッチペダルを踏み、手でMTのギヤを入れてクラッチペダルから左足を離した瞬間、エンジンからトランスミッション、プロペラシャフト、ドライブシャフトまでが直結状態となり、アクセルレスポンスがいいのが特徴。

5MTの伝達効率は95%以上と言われ、直結状態であればそれ以上でしょう。MT車はドライバーの微妙なアクセルワークがダイレクトに駆動輪へ伝わるため、速度管理が容易でドライバビリティがいいのも長所。

速度管理が容易とは、右足で一定の車速を維持しやすいという意味。MT車は走行中、エンジンからタイヤまでが直結状態のため、右足のわずかなアクセル操作で車速を一定に保ちやすいメリットがあります。

MT車の燃費

ガソリンメーター

MTの伝達効率が高いということはイコール、燃費がいいのです。

ドライバーによって運転の癖があるかもしれません。それでも、ATやCVTから5MTに換装するだけで、実用燃費が1~2km/L以上は向上するのではないでしょうか。

ところが、自動車メーカーのカタログ燃費をチェックすると、CVT搭載車の方がMTより若干、燃費がいい傾向があります。

これは、国土交通省が定めている「JC08モード」の燃費試験内容とCVTの相性がいいのか、それともCVTを制御するコンピュータがJC08モードスペシャルなのか、それら両方でしょう。

スズキ、ジムニーの燃費比較(5MT vs 4AT)

CVT搭載車の「JC08モード」カタログ燃費は実燃費との乖離が大きく、まったく参考になりません。

では、2018年7月、20年ぶりにフルモデルチェンジされたスズキ、ジムニーとジムニーシエラのカタログ燃費を比べてみます。WLTCモード燃費が表示されています。

スズキ、ジムニーとジムニーシエラのトランスミッションは4ATと5MTから選択できます。

スズキ、ジムニー(JB64)

直列3気筒DOHC(R6A型)660ccエンジン、インタークーラーターボ付

■市街地モード燃費(WLTC-L)

5MT:14.6km/L

4AT:11.0km/L

■郊外モード燃費(WLTC-M)

5MT:17.5km/L

4AT:13.9km/L

■高速道路モード燃費(WLTC-H)

5MT:16.5km/L

4AT:14.2km/L

 

ジムニーのカタログ燃費では、5MTは4ATより2~4km/Lほど燃費が良好。ジムニーの5MT搭載車は4ATより10kg軽量。

スズキ、ジムニーシエラ(JB74)

直列4気筒DOHC(K15B型)1500ccエンジン

■市街地モード燃費(WLTC-L)

5MT:12.8km/L

4AT:11.2km/L

■郊外モード燃費(WLTC-M)

5MT:15.8km/L

4AT:14.7km/L

■高速道路モード燃費(WLTC-H)

5MT:15.9km/L

4AT:14.6km/L

ジムニーシエラのカタログ燃費では、5MTは4AT車より1~2km/Lほど燃費が良好です。5MT搭載車は4ATより20kg軽量。

WLTC燃費の値はJC08モード燃費より実燃費に近づいています。以上はカタログ燃費ながら、伝達効率が高いMTはATより燃費がいいと言えます。

MTのクラッチ交換は町の整備工場でOK

FRでMT車の場合、メンテナンスといってもミッションオイルを交換するだけ。しかも、ミッションオイルはエンジンオイルのように劣化がどんどん進むわけではありません。

ミッションオイルの交換を忘れていても、ギヤの入りが若干渋くなる程度で深刻なトラブルには至らないのです。

CVTやDCT、ATの故障は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、MTの故障なんて、モータースポーツの世界を除いて聞くことはほどんどないのです。

MTのクラッチ板は消耗品ながら、丁寧に運転すれば60,000km以上の耐久性があります。しかも、クラッチ交換は重整備ながら、町の整備工場でできる作業。これは、とても重要な意味を持つと思います。

このように、5MTは数多いメリットがあります。

それにもかかわらず、日本市場の多くのオーナーがマニュアル車を敬遠するため、結果として今やCVTとAT車全盛の時代です。

5MTは海外市場のためのトランスミッション

欧州や開発途上国では、今もMTが主流。北米を除く世界市場でもMTの比率が高いのです。伝達効率と燃費、信頼性、耐久性、本体重量を考えたら、MTの右に出るトランスミッションは存在しません。

マツダはかねてより欧州市場で評価されてきた歴史があり、マツダのラインアップにはATとMTの選択ができる車種が多く見られます。

それほど優秀なトランスミッションであるからこそ、もっと5MTの採用車種を増やしてほしく思いますね。トランスミッションの出来具合によっては6MTでもいい。

しかし、ハイブリッドとなるとMTとは無関係な世界。

そして、日本を含めた高級スポーツカーからMTが消えつつあります。ハイパワーエンジンを搭載する高級スポーツカーともなると、5MTや6MTでは人間の操作スピードの限界を超えてしまうのでしょう。

今後の自動運転車の将来を見据えると、トランスミッションはMT以外なのでしょうか。

高級車にはスムースなATがお似合い

AT車のアクセルとブレーキペダル

今後もATは日本車、欧州車、アメ車を問わず、Dセグメント以上のミドルからアッパークラスの自動車を中心に採用が続いていくようです。マツダはコンパクトカーのデミオにもAT車を用意しています。

ATの歴史は長く、技術の蓄積とロックアップ領域の拡大により、確実に熟成が進んできました。ATの多段化が進み、変速速度が向上し、燃費面でも改善が進んでいます。ATのスムースな変速と加速感は高級車に相応しいトランスミッションと言えます。

CVTは日本独自のトランスミッション

CVTの違和感

日本の軽自動車、コンパクトカーからミニバンの多くはCVTを搭載しています。管理人は今まで何度も代車でCVT搭載車を運転した経験があります。

CVT搭載車のアクセルペダルを踏み込むと、先にエンジン回転が上昇して後から速度がついてくる印象を受けます。アクセルペダルを深く踏み込むと、更にその印象が強くなります。

アクセルペダルを踏むと、あたかも先にゴムが「ビヨ~ン」と伸びて、その縮む力を利用してクルマが加速するような印象が拭えません。これはラバーバンド・フィールと呼ばれます。

CVT搭載車をドライブしていて、違和感を抱くのは私だけでしょうか。

CVTの伝達効率

次に、CVTの伝達効率は決して高いとは言えないと思います。

下のYouTube動画の透視図を見ると、CVTは二輪スクーター用変速機のような構造。CVTは金属製のコマの結合体であるベルトがプーリーと接触しながら動力を伝える構造。

ベルトはスリップしてはならないわけで、かなりの力でベルトのテンションを張る必要があるはず。CVTハウジングの中でこれらの摩擦力を利用している構造上、動力の伝達ロスは結構大きいと思います。

CVTの場合、特に高速走行時の伝達効率が低下すると思います。

DCTの今後はいかに

欧州を中心にDCT(Dual Clutch Transmission/デュアルクラッチトランスミッション)やDSG(Direct Shift Gearbox/ダイレクト・シフト・ギヤボックス)と呼ばれるツインクラッチ式トランスミッションが普及しています。

DCTの構造は複雑怪奇ながら、DCTの透視図を眺めると、このトランスミッションの基本構造は常時噛合式のMTに似ています。

コンピューターが状況に応じてクラッチ操作を行い、エンジンからトランスミッション、駆動輪は常時、直結状態。DCTのシフトアップとダウンに要する時間はコンマ数秒で駆動途切れは、ほんの一瞬。

DCTの特徴として、アクセルレスポンスと燃費が良くなり、NISSAN R35GT-RやHONDAの一部フィットもDCTを採用しています。

しかし、このトランスミッションはまだ歴史が浅いこともあり、信頼性の確保が今後の課題。複雑な機械ほど、初期段階で不具合が出る可能性があるのは世の常。

もし、DCTに深刻な不具合が発生すれば、町の修理工場やディーラーでは修理不可となる場合もあるでしょう。最悪、DCT全交換という大がかりな作業が必要となる可能性もあります。今後の更なるDCTの熟成に期待したいものです。

ちなみに、管理人は2016年登録のメルセデスベンツA180に試乗しました。このA180は7G-DCTを搭載し、変速ショックは皆無。ATと何ら変わらないシフトフィールは特筆すべき滑らかさがあります。

フォルクスワーゲングループジャパンが7速DSGのリコール

(2020.03 追記)

2019年8月21日、フォルクスワーゲングループジャパンが7速DSGのリコールを国土交通省に届けました。7速DSGは乾式のため、市場からジャダーや走行不能などの不具合が多数、報告されてきた背景があるようです。

なお、湿式の6速DSGはリコール対象外のため、やはり湿式タイプの方が信頼性が高かったのでしょう。

管理人が当ブログ記事を書いたのが2013年8月。

この手の新型トランスミッションは構造が複雑。管理人はDCT(DSG)のトラブルが発生すると、ディーラーや町の修理工場では手に負えないリスクを懸念していました。その諸問題が現実化したようです。

VWオーナーの中には、苦渋の決断でトランスミッションを全交換したケースもあるものと思われます。

MTとATの歴史は長いものの、それ以外のCVTやDCT(DSG)の歴史はまだ浅く、発展途上。

時代と共に、ATを搭載する欧州車のトランスミッションは多段化が進み、他の自動車メーカーも追従するかたちでATの多段化がトレンド。ATの変速スピードが改良され、車種によってはDCT搭載車と遜色が無いほどまでにブラッシュアップされています。

確実に進化しているATを鑑みると、2020年現在、DCTの雲行きが怪しくなりつつある気配を感じます。既に、BMWのDCT搭載車は減少傾向にあります。

今後、DCTの改良と進化が続くのか、それとも、夢のトランスミッションとまで言われたDCTは終焉の方向へ進むのか、今後の動向が注目されます。

最後に

当記事の中で「MT」の内容に同意される方は少数派のことでしょう。

今さらMTなんて「何、昔話を呟いてるの?」なんて印象を受けるかもしれません。マーケットのニーズが製品を作っていくため、今後も日本市場でMT車は少数派だと思われます。

もちろん、歴史が長いMTは手と左足の操作が必要なものの、数多いメリットがあります。今後もMTは根強いMT支持派やカーライフにMTがマッチするオーナーに支持されていくのではないでしょうか。

[参考データ]

世界のAT比率

ギリシャ市場におけるAT比率は2%にすぎない。

 

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コメント

    • 一応念のため、匿名で!
    • 2018年 2月 09日

    この記事に同意します。激しく同意しますが、残念ながら、何も変わらないでしょう。
    MTのラインアップは減少するのでしょう。

    購入の際は5MTは免税の対象ではありませんでしたが、
    今年2018年、雪道を走ってを改めてMtを乗ってて良かったと思います。
    つまりギアの位置を体で覚えているので、とっさにエンブレをかけることが、出来たからです。

    また将来私が認知症になったとしても
    クラッチとブレーキを同時に踏む癖がつくので(急制動には不向きでも)、ブレーキとアクセルの踏み間違によるミスが減らせる。また「クラッチから近いのがブレーキ」と幅も体にしみこんでいるので踏み間違えることも考えにくい。そして、誤作動では発進しない。
    運転中もATより頭や体をよく使う。かつ「~ながら運転」がしにくい。

    さて、急制動をしたことが、ほとんどないので自身はないのですが、対策としては、車間距離を若い頃から心身に叩き込むことにより、危険を回避できるけど、無知・無謀なドライバー、つまり他人の公道は変えれません。車間距離を開けることによる無謀な割り込みや左からの進入などの危険も増します。

    個人的には、「手前に引くとバック」と体が覚えている5Mtの方が6Mtより望ましいです。

    日本はアメリカよりは欧州に近いと思いますが、日本人がATを好むのは、
    ①信号機の多さ:利権? 
    ②労働時間の長さ:疲れてるだろうな、世界一の品質はこれで生まれた?仕事好き(依存)?
    ③精神年齢の低さ:自己責任の低さ?逆に言うとアニメやサブカルチャーはこれで生まれた?
    ④アメリカかぶれが抜け切れない?

      • Heeday
      • 2018年 2月 09日

      コメントありがとうございます。

      MT車は絶滅危惧種のようですね。

    • 一応念のため、匿名で!
    • 2018年 2月 09日

    追記
    ちなみにクラッチつきのバイクにも乗ってますが、
    「この速度ではこのギアで」
    「エンブレを効かせたいなら、何速落とす」
    ってあれこれ考えて楽しいんですけどね。一生理解できないんでしょうね。
    「めんどくせ~。」の一言でした。

    私はMtを愛してますが、走り屋じゃないので、私はバイクも4輪も飛ばしてませんよ。4輪なら流れの速度、バイクならほぼ法定速度程度で、かなり見通しの良い「慣れた直線」に限り流れの速度程度で安全運転してますよ。

    4輪でも勿論してますので「ノーマルタイヤ」でも山口県の街中程度の雪道対策にばっちりでした。
    AT乗りには「ノーマルタイヤ」って散々馬鹿にされ、ここぞとばかりに正義を振りかざされ批難され、駄目だしをくらいました。
    ロー、セカンド、サードをエンブレ使って車間距離開けて、速度を出さなければ走れるのにって思ってます。
    おそらく、AT乗りはこれを読まないだろうと仮定して書き込んでます。

      • Heeday
      • 2018年 2月 09日

      コメントありがとうございます。

      興味深いコメントにお礼申し上げます。

      CVTとATしか運転しない方にとって、MT車の存在は無いに等しいのでしょう。

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