EV電気自動車は普及する?それとも普及しない?バッテリーと充電問題

2009年、三菱自動車からi(アイ)のボディをまとった電気自動車、i-MiEVがリリースされました。iは電気自動車を前提に設計されたのではと思うほど、電気自動車へのコンバートが容易であったようです。

三菱自動車i-MiEV

iのエンジンをモーターに換装してインバーターを取り付け、床下にリチウムイオン電池を上手い具合に設置できたため、パッケージングへの皺寄せは全くありません。クルマを外から眺めても、室内に乗り込んでも電気自動車らしき部品は一切見当たりません。

・最高出力:47kW

・最大トルク:180Nm

・車両重量:1,080kg

航続距離は、市街地走行で空調なしの場合120km、エアコン使用時で100km、ヒーター使用時で80kmと公表されています。

日産自動車、リーフ

そして2010年、満を持して日産自動車から100%電気自動車、リーフが誕生しました。北米市場を視野に入れて開発されたこともあり、ボディは少々大柄で全幅1,770mm、全長4,445mm。5人乗車が可能となっています。

・最高出力:80kW

・最大トルク:280Nm

・車両重量:1,430-1,460kg

航続距離はJC08モードで228kmと公表されています。

両車共にリチウムイオン電池を搭載しています。依然として、リチウムイオン電池の値段が高いこともあり、それが車両価格を大きく押し上げてしまっています。

電気自動車の歴史はピストンエンジン車より長い

三菱i(アイ)ヘッドライト

意外と知られていない事として、電気自動車の歴史はピストンエンジン車よりも長いのです。

当時、バッテリー技術の低さが理由で電気自動車は実用にはならず、その後、ピストンエンジンが急速に普及していったのでした。

そして、2000年代に入り、長い沈黙期間を経て電気自動車がこの世に放たれました。蓋を開けたところ、電気自動車の販売状況は言うまでもありません。

特に大都市圏で車の2台所有は難しいのです。

電気自動車1台に絞ってしまったら、お盆や年末の帰省には使えません。中長距離の旅行も事実上、無理があります。1台しか所有できない条件下で、満タンにして400km以上の移動をこなす必要があります。

それが、電気自動車の普及に強いブレーキをかけています。

一般公道用の電気自動車が100年以上もの間、販売されなかった理由はこれです。

・航続距離が短い

・充電時間が長い

・充電器の設置場所の問題

・高い車両価格

・バッテリーの耐久性問題

電気自動車の現状

ゴルフカート

電気自動車と言っても、一定の敷地内を走行する電動車両は随分前から存在しています。

例えば、ゴルフ場の電動ゴルフカートや生産工場で稼働している電動フォークリフト、運搬車が挙げられます。

しかし、一般公道を走行する電気自動車ともなると複数のハードルが待ち構えているため、市販化が容易ではなかったのです。

i-MiEVのリリース後、マスコミが一斉に電気自動車の報道を繰り返し、決して少なくない人たちがピストンエンジン車から排気ガスを一切出さない電気自動車への移行に期待を膨らませていました。

EVの航続距離

仮に、カタログの航続距離が200kmであっても、エアコンやヒーターの使用で大幅に航続距離が短くなってしまいます。

特に、ヒーターを使用するとバッテリーの消耗が早く、真冬ともなるとリーフでさえ航続距離が50km前後まで低下してしまうデータがあります。

では「ヒーターを我慢しながら運転しよう」といったネット上の書き込みが散見されますけど、人は暑さより寒さの方が辛く感じると思います。降雪地のような環境では、命の危険にさらされます。そこまで我慢して、電気自動車に乗る理由があるのか考えてしまいます。

そもそも、雨風と寒さをしのぐためにクルマで移動するのではないでしょうか。

電気自動車推進派の説得内容として、「一般的なドライバーは1回あたりの移動距離が長いわけではないため、電気自動車に乗り換えても大きなデメリットは無い」といった声があります。

この話を聞くと、電気自動車に300万円以上も支払うなら、自動車の所有をやめてタクシーやレンタカー、カーシェアリングを利用して移動した方が便利で経済的なのではと考える人が出てくるかもしれません。

EVの電費

更に、電気自動車で山岳路を登ったり、高速道路を走行すると電費がどんどん悪化していきます。電費はピストンエンジン搭載車の燃費のようなもの。

ピストンエンジン車ならば、市街地から高速道路に入ると燃費はどんどん良くなっていきます。

ところが、電気自動車の場合、速度が増すほど電費が悪化していくのです。

EVの充電とバッテリーの劣化

三菱i(アイ)

リチウムイオン電池を搭載した電気自動車は普通充電と急速充電を選択できます。

かろうじて、電気自動車が充電スタンドに辿り着いたところで、先客がいれば、最悪30分は待たなければなりません。自車の充電が完了するまで、合計1時間を要してしまうのです。

更に、どのようなバッテリーも急速充電の繰り返しが原因で明らかに寿命が短くなります。ほぼ毎日、急速充電するならば、充電回数は3年経過で1,000回を超えてしまいます。

いくらリチウムイオン電池であっても、これでは劣化から免れないでしょう。

EVの中古車価格

高価なメインバッテリーが電気自動車の価格を大きく押し上げています。ということは、バッテリー本体が劣化して使い物にならなくなってくると、その時点での電気自動車の中古価値は暴落するでしょう。

中古の電気自動車の価格 + バッテリー交換に200万円以上も支払って乗るオーナーがいるのか考えてしまいます。

バッテリーのエネルギー密度

トヨタ自動車のウェブページによりますと、リチウムイオン電池のエネルギー密度はガソリンの約1/50と説明されています。エネルギー密度とは、単位体積が持つエネルギー。

バッテリーメーカー及び、研究機関は、このエネルギー密度を高める技術開発を日々進めているようです。長い目で見れば、このエネルギー密度は向上していくでしょう。しかし、バッテリーのエネルギー密度が高まると、比例して危険性が高まり爆発物と化していきます。

この二律背反の問題解決が今後のバッテリー開発のテーマでもあるでしょう。

当面、電気自動車は妥協の乗り物

電気自動車は、構造が簡単でピストンエンジン車のようなメンテナンスの手間も少なくなります。管理人は、環境問題やCO2削減の問題を含めて、条件付きで電気自動車に対して肯定的です。その条件とは、以下のとおりです。

・2人乗りに制限し、車体を小型化する・・バッテリーも軽くなる。

・エアコンは無し・・航続距離に貢献。

・よってドアも無し・・TOYOTAコムスのようにドアはオプションでもいい。

・近距離専用車に徹する・・充電スタンドは不要。

・販売価格は100万円以下

つまるところ、自動車メーカーは面子にかけて理想を追求した豪華な電気自動車を開発したため、諸問題に悩まされることになってしまったような印象を受けます。

既に、複数の自動車メーカーが小型電気自動車のプロトタイプを作り上げているようですから、それらに期待を託したいもの。小型電気自動車の出来具合によっては、買い物難民の問題が解決へと向かう可能性があるかもしれません。

しかし、今のバッテリー技術水準では、まだまだ電気自動車は妥協して乗る乗り物。

改めてピストンエンジン車を眺めると、ガソリンや軽油の元である石油が持つエネルギー密度の高さと取り扱いの便利さを含めて、石油の偉大さを改めて感じざるを得ません。

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